世界に名だたる多くのアイドル&アーティストを輩出し続けている、アクターズスクール広島(ASH)。在校生の注目株にインタビュー。
SPL∞ASHの現役メンバーとしては最も長いキャリアを誇る柳本愛。パフォーマンス力はもちろん、明るく元気なキャラクターとMC力にも定評のある彼女に、「ACTOR’S SCHOOL HIROSHIMA 2024 SPRING ACT」の感想と、ASHで学んだこと、そして「これから」について聞いた。(※2024年5月に取材)
柳本 愛(やなぎもと・あい)
2007年5月5日生まれ。33期生。Dクラス所属。2021年2月より研修生としてSPL∞ASHに参加。同年12月に正規メンバーに昇格。イメージカラーはオレンジ。
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“最強世代”のMAX♡GIRLSに加入して
──ASH入学の経緯を教えてください。
小学校入学のときに勉強をがんばろうと思って、それまで習っていたバレエを辞めたんです。でも、やっぱり音楽が好きだなと思って、お母さんに歌とダンスが習えるところを探してほしいとお願いしたら、見つけてきてくれたのがASHでした。それが小学2年生のときです。
──そこから本格的に芸能の世界を意識するようになったのは?
小学4年生のときにMAX♡GIRLSに加入させてもらって、注目していただく機会が増えるようになったんです。緊張もしたけど「楽しい」が勝って、こういう世界っていいなと思いました。MAX♡GIRLSには最年少メンバーとして加入したんですが、まわりはもう中学生とかで、芸能界を目指してる子がたくさんいたから、自然と私も目指したいと思うようになりました。
──柳本さんが加入したときのMAX♡GIRLSには、どなたがいましたか?
戸高美湖ちゃん、桑原彩奈ちゃん、中嶋朝香ちゃん、広本瑠璃ちゃん…いまいろんな場所で活躍している人たちばかりで、もちろん当時からスキルもすごかったので、みんなに追いつかなきゃという精神でがんばりました。
──3月20日に開催された「ACTOR’S SCHOOL HIROSHIMA 2024 SPRING ACT」の感想を聞かせてください。
実は発表会前に体調を崩してしまって、喉の調子が戻らないまま本番を迎えたんです。これまでそんなことなかったし、ダンスにも全力で集中したいのに歌への不安がありすぎて、気持ち的にもしんどかったです。でも、半年間がんばってきたことには変わりないので、最後には「やりきろう」という気持ちになれて、楽しく終わることができた発表会でした。
柳本愛
──そんななかでも、オープニングのダンスチームやDクラスなどでは見事なパフォーマンスを披露していましたね。
ソロももちろんがんばりたかったんですけど、半年間このクラスのメンバーでがんばってきたし、今回の発表会で卒業する人もいると聞いてたので、その人たちのためにもがんばらないといけないという思いで、迷惑かけないように一つひとつしっかりやっていこうという感じでした。
ただ、喉の調子が悪かっただけで、体自体は元気モリモリだったので、ダンスチームでは自分なりのものがしっかり出せたんじゃないかと思います!
──全体を通して、特に印象に残っているパフォーマンスはありますか?
自分の出演した演目だとふたつあるんですけど、ひとつは(講師が選抜したメンバーでユニットを作る)「P企画」で松本流歌ちゃん、西原悠桜ちゃんと3人でやった「永遠の不在証明」(東京事変)という歌です。私はいつも元気モリモリ!イェイイェイ!みたいな印象があるかと思うんですが、この曲に関してはそうではなく、先生からずっと「“闇堕ち”しろ!」みたいに言われていたんです。こういう曲はいままでやってこなかったので、すごく楽しかったです。闇堕ちできたかどうかはわからないんですけど、喉の心配でちょっと不安定になってしまっていた部分を逆に出すことができて、個人的にすごくやりきれたなと思います。
柳本愛
もうひとつが、ユニットでやった「STRAWBERRYサディスティック」(E-girls)で、力もスキルもある人たちのそろったユニットでした。6人でたくさん練習してバチバチにかっこよくできたお気に入りの演目です。
柳本愛
──このユニットには、柳本さんより世代の若い根波夢依咲さんと小田珠希さんも参加されていましたよね。
はい。私、リハーサルのときに「この子、めっちゃ成長してるやん!」みたいなのを、よく見てるんです。明らかにずば抜けて見える子がいたりすると声をかけたいなと思うんですよね。このふたりに関しては、前回の発表会のリハーサルのときから声をかけさせてもらってました。
──そういった面も含めて、柳本さんはいまASHの中でも頼りにされる存在だと思うんですが、一方で西原悠桜さんから「すごくいい子だけど、でも本当はそれだけじゃないんですよ」という証言が届いています。
おっと、言わないでほしいなあー! でも、たしかに今回は特に喉の不調でちょっと不安定になってしまった時期があって、それを支えてくれたのが西原悠桜ちゃんをはじめ、SPL∞ASHのメンバーでした。別にほかの子たちと接するときに自分を繕っているわけではないんですけど、SPL∞ASHのメンバーには奥の奥にある素の部分をさらけ出しても恥ずかしくないというか、逆にさらけ出したいと思えるようなメンバーなので、西原悠桜ちゃんが言っていることは間違いないです。ふふふ。
中学受験でのブランクを乗り越えて
──今回の発表会ではSPL∞ASH同窓会も開催されましたね。
私がSPL∞ASHに入ったばかりのときに全部を教えてくださった先輩が、永尾梨央ちゃんや高竹香夢ちゃんでした。一緒のステージに立つのは本当に久しぶりで、懐かしいというか自分がちょっと幼くなったような感覚になりました。
あとは、ASH入りたての小2の私でも「すごい人だ!」とわかるくらいオーラを放っていた佐藤春佳さんともご一緒できてすごくうれしかったです。私が初めての発表会のときに卒業されたと思うんですが、今回もすごい歌声を披露されていて本当に感動しました。裏ではたくさんお話もさせていただいて、クールなオーラを放ってるのにすごく優しいから、ギャップ萌えでニヤニヤが止まりませんでした。
柳本愛
──自分以外のパフォーマンスで印象に残ったものはありましたか?
FUKUYAMAクラスの「Good Luck」(AOA)は、激しい踊りをしてるのに歌声がブレてなくて、迫力もあってすごかったです。みんな曲の世界に入り込んでいて、すごくそろって見えたんです。
広島校のDクラスでも「歌がブレるからちょっとダンスを抜いて」と言われることがあって、まだまだ実力不足だなと思うことがあるんですけど、リハーサルのときにFUKUYAMAクラスを見て「次の発表会、負けてられない!」ってメラメラと燃えました。福山校からも学び取れることが多いなと思ってるので、いい意味でやっぱりライバル視はしてます。
──ASHに通うようになって、役に立っていると実感することはなんですか?
社交性を身につけたことと、礼儀を学べたことは、明らかにASHに入って成長できた部分だと思います。MAX♡GIRLSのときは、ただステージをこなすことだけを考えてやってましたが、SPL∞ASHや「サンフレッチェ・レディース」として出る外部のステージを通して、音響さんやMCさん、ディレクターさんなどたくさんの人の力でステージを作り上げていくことを知りました。
それが学校でも出るようになって、自分から大きな声で目を合わせてあいさつをすることは、私の中でルールを通り越して、当たり前のことになっています。なので、ASHでのたくさんの経験が、いまの柳本愛を作り上げてくれたんだと思います。
──ASHでの経験でうれしかったことはなんですか?
ダンスチームに初めて受かったときと、ソロに初めて受かったときです。私がASHに入ったときは、ユニットにひとつでも受かったら本当にすごくて、みんな受からずに涙するような時期があったんですね。私よりも実力のある人がたくさんいたけど、負けたくないからがんばってチャレンジをして、選んでもらえたときは本当にうれしくて、今も忘れられない瞬間です。
──それは何歳くらいのころですか?
どっちも小4くらいだったと思います。ソロでは母が探してきてくれた森口博子さんの「ETERNAL WIND」を歌いました。やっとみんなと並べるレベルに到達できたんだなと実感できるようになった時期でした。
──逆に、スランプの時期もありましたか?
中学受験がしたくて半年間のお休みをもらったんですけど、その期間は本格的な声出しも、ダンスも一切してなくて、スクールに戻ったときにちょっと太ってしまっていたんです。体も重たいし、声も出にくくなって、歌い方がわからなくなっちゃって。その時期はずっとソロが受からなくて、明らかにメンタルもやられてました。
──それをどう乗り越えていったんですか。
とりあえず戻すことに必死でしたね。まずは状況を受け入れて、もう一度ダンスと歌を楽しいと思えるように、自分がいま出せる音域に合った曲をがんばって探して、それまでもずっと続けてきたルーティンを守りながらがんばって乗り越えた気がします。
柳本愛
──柳本さんはステージでの明るく元気な姿が印象的でしたが、お話を聞いて、とても客観的に物事を見ているんだなと思いました。
本当ですか? そんなに変わらないですけど、まじめになるときはこんな感じです。
──そういった面はどのように培われていったと思いますか?
私は、MAX♡GIRLSもSPL∞ASHも最年少で入っているので、先輩方ががんばって作り上げてきた雰囲気が、感じ取るまでもなくすごく伝わってきたんですね。それが体に染みついてるというか、努力し続ける人たちのそばにいられたことで、大人っぽくなれたんじゃないかなと思います。
卒業生・中嶋朝香との固い絆
──いまパフォーマンスで参考にしている方はいらっしゃいますか?
西原悠桜ちゃんと竹本愛梨ちゃんです。西原悠桜ちゃんはやっぱり歌声がすごくて、西原悠桜ワールドを作るのがすごく上手だなと思います。竹本愛梨ちゃんはASHではあまり習わないダンスを習ってきた子で、それをフリーや自分で考えるソロにも取り入れていて、軽くも重くも何にでも化けられるダンスをするので、すごいなと思ってます。
先輩だと、SPL∞ASHで緑色担当だった中嶋朝香ちゃんも。ジャズも、勢いのある振りもいけるし、繊細な歌もいけるし、ASHを卒業する直前になってすごく力強い歌声が出るようになったんですよ。その努力を身近でずっと見てきて、自分もそれぐらいがんばろうと思ったんですけど、簡単にはいかなくて。本当にどれだけ努力をしてきたんだろうって思います。その3人は私の憧れですね。
──現役の生徒さんにお話を聞いていると中嶋さんの名前を挙げる方が多いんですよね。
ちょっと自慢になっちゃうんですけど、一心同体といってもおかしくないぐらいの大親友なんですよ。毎月お泊まりとかもしてたことがあって、性格を知り尽くした上でも彼女は本当にすごくって。目標が明確にあって、それを思うだけでなく、ちゃんとストイックに努力して実行するんです。
「力強い歌が苦手なんだよね」と本人から聞いていて、お互いにカラオケでアドバイスし合いながら練習したりしてたんですけど、結局、それも克服して卒業していったんですよ。もう、めちゃくちゃかっこいいじゃないですか!
──中嶋さんは東京で活動をされていますが、最近でも会うことはありますか?
「(広島に)帰ってくるときは必ず連絡して」ってお願いしてて、定期的に会ってます。自分にストイックで、かつまわりに迷惑をかけたくない子なので、年末の帰省の1日をちょっと私が借りまして、「全部吐け!」みたいな感じで、お互いの心境を言い合うってことをやってます。
中嶋朝香と柳本愛
──ここまでASHでやってきて、ご自身のターニングポイントになったタイミングはありますか。
SPL∞ASHに加入したときですね。練習量も違うし、集まる回数も違うし、ステージの数も増えるし、注目される機会も増えるし。環境がガラッと変わった瞬間がそこでした。スクールの代表ユニットといわれてるぐらいだから覚悟はしてたんですが、最初は「こんなに集まるの?」「1回の練習でこんなに曲やるの?」ってびっくりしました。ステージが多いぶん、努力の量も増やさなきゃいけなくなりました。
──その環境は、ご自身の本気度にも影響してきますか。
変わりますね。永尾梨央ちゃんのような歌姫といわれてる人たちと一緒に活動をするから影響力がすごいし、モチベーションもすごく上がりました。それまでも全力でがんばってなかったわけじゃないんですけど、限界突破しなきゃと思った時期がそこでした。
──これからの夢や目標を教えてください。
歌でも、演技でも、ダンスでもいいので、私のパフォーマンスで、誰かの笑顔やうれし涙を作ったり、少しでも感情を揺さぶることができる人になりたいです。小さな目標に思えるけど、人に影響を与えるって本当にすごいことだし、それが大きな夢につながる一歩だと思ってます。
柳本愛
撮影=石垣星児
執筆=森野広明
編集協力=木田祐介
編集=中野 潤