世界に名だたる多くのアイドル&アーティストを輩出し続ける、アクターズスクール広島(ASH)。
地方のいちスクールが、なぜこれだけ多くのスターを産み出すことができるのか。
運営スタッフへの取材から、その秘密を解き明かす。
強い熱意が夢を引き寄せる
CHRIS(クリス)ダンサー、コレオグラファー
5歳よりクラシックバレエをはじめ、NY留学中にHIPHOP、JAZZ、REGGAEなどストリートダンスを学ぶ。インターナショナルクイーンコンペティション世界3位、ベストドレス賞などのタイトルを獲得。
ダンサーネームCRi$sY(クリッシー)として世界の舞台でも活躍。幼稚園教諭二種免許を持ち、子どもたちの指導も担当。ASH創立メンバーでPerfumeの振りつけも行うMIKIKOとダンスチームを組んでいた縁で、設立半年後から参加。
私がここで教えているのは、リズムの感じ方や、体の使い方といった、成長をしていくために必要な基本のことです。あとは、学ぶ姿勢ですね。それさえ身につけてくれれば、卒業したその先でも、しっかり成長していってくれます。
「姿勢」には、考え方や礼儀といったことも含まれます。
人を大切にする子、自分の信念を曲げない子は、成功していきますね。
もちろん、ご家族やまわりのサポートも重要になってきますが、最後は「絶対に夢をつかむ!」という熱意が人の何倍も強くないと、伸びないんです。
モーニング娘。の鞘師里保もそうでした。ご家族の熱意もすごかったし、それに応えたあの子たちは本当にすごいと思います。
ASHの大きな特徴は、年に2回の発表会があって、そこに出るためのオーディションがあること。
目標があるから、生徒たちは実技、内面ともに高めていけるんです。
オーディションには2種類あって、自分たちで組んだグループで受ける「ユニットオーディション」、そして個人での「ソロオーディション」。ほかにも、講師が選抜したメンバーでユニットを作る「P企画」というものがあり、このユニットで発表会のオーディションを受けることもあります。
私が担当をしているMAX♡GIRLSというSPL∞ASHの妹グループがあるんですが、いまここで成長している子たちが、どんどん事務所に入っていってます。
険しい道が一番の近道
ASHで講師をすることのやりがいは、稽古を通して人の成長を見届けられること。
自分が提案したアイデアから生徒自身に変化が生まれ、チャンスをつかんで羽ばたいていく。そんなときに、ここで講師をやっていて良かったなと思いますね。
この春から「ピンク・ベイビーズ」への加入が決まって、今回の発表会で卒業する小守梓紗は、もともとヒップホップをかっこよく踊るクールな子で、歌は自分でも苦手だと思っている子でした。
でも、稽古を通して歌がどんどん上手になったんですよね。
実はアイドル的なかわいいものも好きだということに気づいて、雰囲気も大きく変化しました。MAX♡GIRLSでもリーダーをやってくれて、若手をまとめてくれる存在になったんです。
なぜ、ASHからたくさんの優秀な子が出るのか。
それは、講師も生徒もまじめにやっているから。こんなにつらい稽古をしなくても、もっと楽なやり方もきっとあると思います。
いまはインディーズのCDもすぐに出せるし、広島にはローカルアイドルの団体もいっぱいありますが、ASHにいるからには、なかなか近道ができない。
だから、楽なほうがいいという子は辞めていきます。
でも、だからこそ残っている子は楽をせずに、力をつけているということなんです。そういう子たちが、卒業していった先で評価を得て、ASHの信頼につなげてくれている。
鞘師里保にはハロプロでさえもったいない
いまなら段原瑠々もそうですね。ハロプロ研修生の「公開実力診断テスト2014」で1位を獲得しました。
ちゃんと力をつけて、卒業していってくれたんだと、私も感動しました。
ハロー!プロジェクト(以下「ハロプロ」)には、段原より先にモーニング娘。に鞘師里保が入っています。
こう言うのもなんですが、はじめ、彼女はハロプロでさえもったいないんじゃないかと思ってたんですよ。
将来、プロのダンサーとしてもやっていけるくらいの実力がある子でしたから。ダンスに関しては最初から飲み込みがすごく早かったですね。
歌はそこそこうまいんですけど、もっとうまい子がたくさんいたから、ソロオーディションにはいつも合格していたわけではありませんでした。
だから、スクールでは“ダンスの里保ちゃん”といった感じだったんですけど、いまは歌唱力が格段に上がりましたね。
コンサートにも誘っていただくんですけど、ハロプロに入るとすごく鍛えられるんだなと、いつも感心します。
そうやって教え子の成長を見ることができるのは、本当にうれしいですね。
[「見せて恥ずかしいものは出さないこと」高橋富美俊(プロデューサー)インタビューに続く]
撮影=石垣星児
執筆=力石恒元、森野広明